こころん柔道部 理事長 中里文子
「ソーシャル・ビジネス」という視点での取り組み
寄付やボランティアではなく、ビジネスによって社会課題を解決する「ソーシャル・ビジネス」は、2006年にノーベル平和賞を受賞した国連SDG‘sの策定メンバーであるムハマド・ユヌス博士が提唱した考え方です。海外では、「ダノン」「アディダス」などがその取り組みに参加しています。ソーシャル・ビジネスでは、ビジネスで得た利益を自分たちのために使わず、問題を解決するために使うという特徴を持っています。
1.社会性:課題をどうとらえるかが重要
2.事業性:課題を解決するように、ビジネスをデザインする
3.革新性:出来るか・出来ないかではなく、「やるか・やらないか」
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そこで、ソーシャル・ビジネスとしての「柔道」を考えました。
1. 課題(テーマ)
「誰一人取り残さない柔道」をめざす。
感覚柔道だけではなく柔道科学に着目し、実践から得られた効果を社会のニーズに合わせ、柔道で解決していく。
2. 目標 「柔道人口を増やす」
対象を日本の将来を担う「幼児」に絞る。
ニーズに応じ、子どもの練習見学に来ている「親」も柔道練習に取り込み、「子どもにやらせたい」と思う柔道の魅力を自ら体得してもらう。また、見学を通じ、親の育児不安を積極的に受容する仕組みを作る。
3. 実践 「地域柔道」 に息吹を吹き込む(エンパワメント)
持続可能な共存共栄を「心・技・体」の視点から考える。
「ボランティアによる指導を前提とした柔道教室」から、メンタルな部分には臨床心理士などを含めたプロフェッショナルなカウンセリングと、体づくりと技の部分には、体力と技術レベルに合わせた柔道指導を行う。「対価」を得て、持続可能な事業展開を実践する。
「柔道療育」という考え方
【幼児期の運動能力の発達】:H28年度 体力、運動能力調査(幼児運動指針ガイドブックから)
(2018年)スポーツ庁:6歳までの幼児期における運動習慣が与える影響
・4割強が「外遊び」の時間(1日1時間(60分)未満)
・6歳までに大人の約8割程度までの神経機能が発達する(7~8歳がピーク)
・特に、「タイミングよく動く」、「力加減をコントロールする」(運動を調整する能力)が、顕著に向上する。
「反射神経(脳と神経をつなぐ神経系ネットワーク)」が発達する ⇒ けがや事故防止につながる
【幼児期に必要な動き】
「体のバランスをとる動き」:立つ、座る、寝転ぶ、起きる、回る、転がる、渡る、ぶら下がる
「体を移動する動き」:歩く、走る、跳ねる、飛ぶ、登る、降りる、這う、避ける、すべる
「用具などを操作する動き」:持つ、運ぶ、投げる、捕る、転がす、蹴る、積む、漕ぐ、掘る、押す、引く
※幼児にとっての運動は、楽しく体を動かす「遊び」を中心に行うのがポイント(散歩、手伝いも含む)。
※毎日60分以上行うようにする。
※運動には「社会的意味」もある。
・ルールを守る。
・自分の欲求を我慢して、相手に譲る。
こころん柔道部
NPO法人こころんプロジェクトは、「なかなか社会につががることができない、または、成長や発達の過程で課題があり、立ち止まっている青少年やその家族への支援」を柱に活動しています。
アスリートのメンタルヘルスケアを担い活動していく中で、10代の柔道家たちが「小さい頃、なかなか自分を出せずにいじめられた経験があり、‟こころもからだも強くなりたい“と思ったことが柔道を始めたきっかけ」と答える人が少なくないと知り、「柔道」を媒体として私たちに何かできないかと模索してまいりました。
私なりに「柔道」を評価していくとしたら「受け身」が象徴的ですが、「自分を大切にすること」ではないかと思うのです。私は、子どもたちが健やかに成長していくためには、「自分を大切にする」ことがとても大切だと思うのです。柔道には「精力善用」「自他共栄」という言葉があります。「精力善用」は、柔道を通じて鍛えた心と体を世の中の良いことに使おう、「自他共栄」は、仲間を大切にし、自分だけでなく相手と共に成長していこう、という意味が込められています。
こころん柔道部の活動を通じて、柔道を学ぶ機会や柔道の魅力を体感できる機会をすべての子どもたちに提供していきたいとの思いから、こころん柔道部を立ち上げました。
こころん柔道部
理事長 中里文子
白石基金受賞