私が講道館少年部を指導するようになった頃、当時の先生方に「向井君、講道館少年部では『足技』の指導を最も大切なものと位置付けている。正しい姿勢と組み方で適度な間合いを取り、力に頼らないタイミングの良い『足技』を掛けることができるよう指導を工夫しなさい」と言われていました。なるほど当時を振り返ると、少年部の子どもたちは少人数な上に試合等で勝てるレベルではありませんでしたが、『足技』だけは有段者にも勝る技の切れを見せていました。当時の先生方の理論的で熱心な指導の賜物であったことは、間違いありません。
私自身の『足技』を振り返ってみると、個々の技についてはそれぞれ工夫して練習していたものの、「払い」と「刈り」の違い等の理論も理解しておらず、系統だった反復練習の積み重ねもできていませんでした。まずは、自分自身の『足技』から見直そうと考え、大澤慶己十段をはじめとした先生方に教えを請いました。33才で山口香・持田典子さんらと一緒に女子強化コーチを拝命したのですが、強化合宿における練習の合間に足技を指導してもらったのを昨日のことのように思い出します。ふわりと組んで足技だけで乱取をする「足技選手権」という練習をよくやったのですが、当初は彼女たちにまったく歯が立ちませんでした。
技にはいろいろな掛け方があります。特に『足技』は、軽快な動きで相手より速く動いて体をさばき、都合の良い場所に体を移動させながら相手を崩してタイミング良く技を掛けることが必要です。また、その技を掛けきって投げることを大切にしながらも、技の連絡等を見据えた工夫も重要だと考えています。
小内刈の基本の入り方(右組み、取りからの視点で解説)
小外刈りの基本の入り方(右組み、取りからの視点で解説)
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